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ゆうべから降り続いている雨が、
ガードレールの向こう側の鉛色の海面に無数の丸い波紋をつくり、
普段ならカップルや小さな子供とその母親で賑わっている夕方の山下公園は、
煙のような霧に包まれてひっそりとしていた。
ワイパーにぶつからないように車のフロントグラスを弟の和幸がノックしたのは、
灰皿に煙草を放り込む瞬間だった。ウィンドゥを下ろした。
「悪いねこんな日に。色々、頼みたいことがあってね。」
乱れた髪、色の悪い顔に無精髭、
肌寒い11月の雨の日だというのにネクタイをしていないYシャツ姿にサンダル履きで、
傘を持っていない左手をポケットにいれて肩をすぼめていた。
「今日は11時に店を閉めるから、その後にちょっときてほしいんだけど…」
「まだ、4時だから、一回会社に帰ってから行くよ。今日は、あと、誰が来るんだ?」
「兄貴だけ。他の連中にはもう話して、済んでるから。」
「しかし、いつも頼み事の時にしか電話してこないよな、お前は。」
「これが、最後の頼みだと思って、頼むよ。」
力なく笑った。雨粒が風に乗り、傘を意味のないものにしている。
和幸の顔に雨が当たっている。髪と髭が濡れ、一層荒んでいるように見えた。
「11時、待ってるから。じゃあね」
子供の頃からずっと同じ口調。幾つになっても弟は弟であるということが、
この要件を飲ませるきっかけでもあった。
しかし、出来れば、一生頼まれたくない要件だった。
●
原稿を書きはじめようとした瞬間に内線電話がなった。
山のように乱雑に積み重ねられている書類を掻き分けて電話を見つけだし、
受話器を耳にした。
「川口さん、お電話です。弟さんだと思うんですけど…」
「分かった、つないでくれ」
「兄貴?俺だけど」
弟の和幸は、横浜でバーを出している。
このところ景気が悪くて店を続けていくのが厳しい、
というのは時々かかってくる母親からの電話で知っていた。
それまで、深夜の12時で閉めていた店を朝までやることで、
なんとかしのいでいるらしい。金の無心かと思った。
しかし、下の子がもうすぐ幼稚園に入る正幸には、まとまった金は用意できない。
金なら断らなくてはならないと思った。
「実は、ちょっと言いにくいんだけど、
俺、もうすぐ警察につかまることになると思うんだ。ちょっと、事情があって…」
神妙な口調と現実離れしている話しの内容で、冗談と思った。
しかし、和幸は、こんな時間に酒も飲まずに冗談を言うような人間ではないことを、
正幸は知っていた。
こめかみのあたりに急に縮まるような緊張感が走り、受話器を強く耳に押しつけ、
しかし、周りにいる人間に聞き取れないくらい小さな声で言った。
「どういうことだ?何があったんだ?つかまる?いつだ?」
話すことに脈略はなかった。一瞬のうちに頭の中に浮かんだ疑問を投げ掛けた。
和幸は答えなかった。代りに、
「出来れば明日、店の方に来てくれないかな」とだけ言って黙った。
窓の外の、夕焼けで赤みの帯びていた景色がいつのまにか夜景に変わる時刻。
オフィスの中は、取材を終えて帰ってくるライター達で、
これから始まるというような活気に溢れている。
その活気がはるか遠くに感じ、自分だけが違う場所にいるような疎外感を感じていた。
「分かった」
電話を切り、すっかり暮れた夜の街を窓から見た。
憂鬱な気分が、明日、会うまでの間にどんどん膨らんでいくことを感じていた。
(つづく)
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